2004年9月1日

中国知財事情 第4回

中国意匠審査指南(審査基準の改正について)

中国意匠審査指南(審査基準)が改正され、2004年7月1日より施行された。
第4回目となる中国知財事情では、改正のポイントと今後の対応について特集する。

1 意匠判断の主体

意匠判断の主体「一般消費者の定義について」

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 旧中国意匠審査指南で定められた、意匠の比較判断の主体は「一般消費者」である。
 しかし、ここで定義されている「一般消費者」と、日常生活の中で通常に理解される「一般消費者」とは大きな違いがあったため、意匠の比較判断に誤解が生じるおそれがあった。
 新審査指南では、意匠の比較判断上の「一般消費者」を、日常生活の中で通常に理解される「一般消費者」に一致させて定義したことにより、意匠の比較判断が理解しやすくなった。

2 意匠判断の原則

判断原則は「全体的視覚効果への顕著」な影響に変更

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 旧意匠審査指南は「一般消費者の誤認、混同」を類似の判断基準としている。
 今回の改正で「一般消費者」の定義を改正したことに伴い、「誤認、混同」基準をそのまま使用すれば、判断基準のレベルが低下するおそれがある。
 そこで新審査指南では、従来の判断基準の高いレベルを維持するために、同一や類似を判断する意匠の違いがその物品の「全体的視覚効果に顕著な影響」を与えるか否かを基準とし、顕著な影響を与えた場合には類似しないとした。

3 意匠判断の方式

1 離隔対比方式の廃止

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 意匠の同一または類似を判断する場合には、通常同時に両意匠を分析し比較した上で判断すべきであるから、離隔対比の方法(離隔対比の項)は削除された。

2 意匠の総合判断及び主要部の判断

 意匠の類似を判断する場合に、総合判断を採用するか、主要部判断を採用するかによって、全く異なる結果を招くおそれがある。
 したがって、どのような場合に主要部判断を採用するか、いかに主要部を認定するかなどが明確にされていないと、判断する際の尺度が把握しづらく、公平に審査することができないおそれがある。

今回の改正では、

  • 1 一般物品については、総合判断を採用して同一または類似の判断を行い、
  • 2 主要部判断については、特に一般消費者の注意を引きやすい部分に限って適用されることになった。

4 意匠審査指南(抜粋)

第五章 意匠の同一及び類似性の判断
[1] 前言(省略)
[2] 法律根拠(省略)
[3] 判断客体
3.1 判断客体の意味(省略)
3.2 判断客体の類型(省略)
[4] 判断主体の基準
[5] 判断原則
[6] 判断方式

[4] 判断主体の基準

 意匠が同一または類似であるかを判断する時には、被比較意匠物品の一般消費者の知識レベル及び認知能力に基づき評価を行わなければならない。

 異なる種類の被比較意匠物品には異なる消費者群体がある。意匠物品の一般消費者は以下の特徴を具備しなければならない。

  • 1 被比較意匠物品の同一または類似の種類の物品のデザイン状況について常識程度の理解を有する。たとえば、自動車に対して、その一般消費者は市場に販売されている自動車及び大衆媒体の中でよく見る自動車広告より披露された情報等について、ある程度の理解を有する。
  • 2 意匠物品間の形状・図案及び色彩上の差異について、一定の識別力を有するが物品の形状、図案及び色彩の些細な変化に注意を払わない。

[5] 判断原則

 一般消費者が被比較意匠と先行意匠とを全体観察することにより、両者の差異が物品の全体的視覚効果に顕著な影響を与えないと認識する時は、被比較意匠と先行意匠とは類似する。そうでなければ、両者は同一でもなく類似でもない。

 一般消費者が被比較意匠を先行意匠と誤認・混同する時には、両者の差異は物品の全体的視覚効果に顕著な影響を与えない。

 但し、単に二つ意匠が一般消費者に誤認、混同させないことだけで、必ず両者の差異が物品の全体的視覚効果に顕著な影響を与えるとの結論になるとは限らない。

 顕著な影響を与えるか否かを確認するには、一般的に以下の要素を考慮しなければならない。

  • 1 使用する時に容易に見える部分は、容易に見えない部分より、通常は全体的視覚効果に、より顕著な影響を与える。例えば、ダクト通風板の変化はその他部分の変化より、通常はより顕著な影響を与える。しかし、証拠により容易に見ることができない部分の特定設計が一般消費者の目をひくような視覚効果を生じる場合にはその限りでない。
  • 2 物品のある部分はこの種類物品において公認される通常の設計部分と証明される場合には、その他部分の変化は通常は全体的視覚効果により顕著な影響を与える。例えば、型材の断面周辺が通常の矩形で構成される場合には、型材断面の変化は通常はより顕著な影響を与える。
  • 3 寸法が異なる場合は、寸法の差異により単に物品全体を拡大または縮小させる時には、通常は全体的視覚効果に顕著な影響を与えない。
  • 4 物品デザイン上の変化を導かないまたは単にこの種類意匠物品の通常選択される材料の取り替えの場合には、通常は全体的視覚効果に対して顕著な影響を与えない。例えば、ある色彩、色合い及び質感がある金属と上述の金属の色彩、色合い及び質感を模倣したプラスチック製の物品との材料の差異のみは通常は全体的視覚効果に顕著な影響を与えない。
  • 5 物品の機能、内部構造、技術的性能及び物品の機能により唯一限定できる特定形状は、通常は全体的視覚効果に対して顕著な影響を与えない。例えば、電源スイチの板またはコンセントの上に、ある機能物品を、国家基準で定められた他の種類の機能物品と取り替えるような変化は、通常は全体的視覚効果に対して顕著な影響を与えない。

[6] 判断方式

  • 6.1 一般消費者の水準で判断する
     特許審査官は、専門設計者または専門家などの視点で判断するのではなく、一般消費者の認識の視点から判断しなければならない。
  • 6.2 単独比較
     同一または類似の判断において、一般的に一つの先行意匠を用いて被比較意匠と単独比較を行わなければならない。二つまたは二つ以上の先行意匠と組み合わせて被比較意匠と比較を行ってはならない。

     仮に被比較組物意匠の中にいつくかの独立の使用価値を有する物品の意匠が含まれる場合には、異なる先行意匠と各物品の意匠とをそれぞれ単独比較を行うことができる。

     被比較意匠は組み立てにより使用できる少なくとも二つ物品から構成される物品の意匠である場合には、その物品の数に対応した組み立て際に使用される物品の外観と結合し、一つの先行意匠として被比較意匠と比較を行うことができる。
  • 6.3 直接観察
     意匠の同一または類似判断を行う時には、視覚で直接に観察しなければならない。凸レンズ、顕微鏡、化学分析等のその他の工具または手段を用い、比較してはならず、視覚により直接に分別できない部分または要素は判断の根拠にしてはならない。例えば、視覚により織物の形状、図案及び色彩を観察する時には同一または類似であるが、しかし凸レンズの下で観察すれば、その模様がある程度異なり、その形状及び図案は大きい相違があっても、このような場合では依然と同一または類似すると見なされる。
  • 6.4 離隔観察
    削除
  • 6.5 物品の外観のみを判断の対象とする
     物品の形状、図案、色彩三要素またはその結合が意匠の同一または類似判断の対象になる。即ち、物品の外観のみを判断の対象とする。被比較意匠が部分要素のみをもって、その保護範囲を限定する場合には、その他の要素は先行意匠とを比較する時には考慮しない。

     表面に透明材料が用いられる物品にとっては、人の視覚を通じて観察できるその透明部分内の形状、図案及び色彩は、当該物品の意匠の一部と見なさなければならない。

     差込物品または差込ユニット玩具物品については、この物品を購買または差し込む過程中、一般消費者は単独の差込物品及び差込ユニット物品の外観の印象が残るので、差込物品の外観または差込ユニットの全て単独物品の外観を対象としなければならず、差し込んだ後の全体的形態を対象に同一または類似の判断を行ってはならない。

     ここでいう差込玩具とはそれと同一の物品と差し込むにより特定の形状または図形を有するユニット玩具をいう。ここでいう差込ユニット玩具物品とは、差し込むより特定の形状または図形を有する分割できないユニット差込玩具を言う。

     差込ユニット玩具物品の意匠は一種類物品の一つ意匠に属し、その意匠は全部ユニットの意匠を指し、差込ユニット中の各物品の外観は単に差込ユニット意匠の一部と見なされる。
  • 6.6 総合判断
     一般物品の意匠に対して、総合判断の方法を採用し、同一または類似の判断を行われければならない。総合判断の方法とは、被比較意匠の全体から先行意匠と同一または類似するか否かを確定し、意匠の部分または局部から先行意匠と同一または類似するか否かの結論を出してはいけない。
  • 6.7 主要部判断
     6.7.1 主要部の意味
     ある物品において、その他部分より明らかに一般消費者の注意を引きやすいような部分が存在する場合には、当該部分は当該物品の「主要部」と称される。

     6.7.2 主要部の確定
     「主要部」の確定は一般消費者の注意をひく要素と密接に関連する。「主要部」を確定する時には、物品の使用状態、先行の同一または類似の物品においてよく見られる意匠の形式及び全体的視覚効果に与える影響を考慮して確定することができる。一般的に、使用状態の下でその他の部分より全体的視覚効果に与える影響が明らかに強い部分のみが「主要部」と判断される。

    具体例
     使用状態で、特定の方向で使用者を向く物品については、例えば壁掛け固定式スピーカーは、使用状態で見られる部分が見られない部分(例:壁掛け式固定スピーカーの裏面)より、全体的視覚効果に与える影響は明らかに強い。従って、この種類の物品に対しては使用時に見かけられる部分らを主要部とすることができる。例えば机及びいすの裏面、壁掛け式固定ポストの裏面、プレートの裏面、テレビなど家庭用電気器具の裏面と底面、時計の裏面、カーペットの底面、瓶及び壺の底面、及びダクト式バスルーム通風機の空気取入れ板以外の部分などは、通常に一般消費者に注意を引かないので、判断の「主要部」としてはならない。

     6.7.3 主要部と類似との関係
     被比較意匠の主要部の外観が先行意匠に対応する部分の外観と類似しない場合には、被比較意匠と先行意匠とは類似にならない。