2003年6月1日

中国知財事情 第3回

中国知的財産制度の状況と日本側の対応について

1. 中国知的財産制度の整備が進み、知的財産制度に関する状況が入手し易くなっている。

[1] 法的整備が進んでいる。

1 最近、WTO加盟に伴って知的財産法制度の改正が行われてきた。

  • 2000年 特許法改正
  • 2001年 特許実施細則改正
  • 2001年 商標法、著作権法改正
  • 2001年 集積回路の回路配置設計保護条例施行
  • 2001年 電子計算機ソフトウエア保護条例改正
  • 2002年 商標条例改正
  • 2003年 馳名商標認定弁法施行

2 最高人民法院が知的財産法の具体的運用についての訴訟規則・司法解釈を制定。

  • 2000年12月21日 ドメインネームの民事係争事件に係る審理の法律適用解釈
  • 2000年12月21日 コンピュータネットワーク著作権係争に係る審理の法律適用解釈
  • 2001年2月14日 植物新品種紛争案件の審理に関する若干の問題の解釈
  • 2001年7月1日 提訴前特許権侵害行為差止めに係る法律適用問題の解釈
  • 2001年7月1日 特許紛争の審理に適用する法律問題の解釈
  • 2002年1月21日 商標紛争事件の審理における管轄及び法律適用問題の解釈
  • 2002年1月21日 商標権侵害行為に対する提訴前の差止め・証拠保全の法律適用問題
  • 2002年4月1日 民事訴訟法証拠に関する若干の規定
  • 2002年10月16日 行政訴訟法証拠に関する若干の規定
  • 2002年10月16日 商標に関する民事紛争事件における審理の法律適用問題の解釈
  • 2002年10月16日 著作権に関する民事紛争事件における審理の法律適用問題の解釈

[2] 知的財産関係法廷・訴訟手続の整備が進んできた。

1 知的財産権を取り扱う法廷の整備が進んでいる。

知識産権(特許)法廷のある裁判所

  • 最高人民法院 1
  • 高級人民法院 14
  • 中級人民法院 30
  • 基礎人民法院 4

2 合議制と公開裁判制度が明確になった。

ホンダの審決取消訴訟の審理が北京第1中級裁判所で公開された。

3 審理開始前に当事者間での証拠交換等による審理促進が図られた。

複雑な事件では審理開始前に当事者間で証拠整理を行わせる

4 専門家証人・鑑定機関の利用を認め専門分野への対応力を増強。

権威ある鑑定機関・鑑定人を確保することが重要。

[3] 知的財産権の保護範囲が明確化されてきた。

 特許の保護範囲に関する規定を明確化し、不足分を最高人民法院の司法解釈で補うことにより解釈の範囲が明確になってきている。具体的には「禁反言の適用」「均等論」等についての最高人民法院の司法解釈が出されている。

[4] 仮処分・証拠保全に関する手続の整備がなされた。

 知的財産法の各法律で仮処分・証拠保全に関する規定を設け、運用は最高人民法院の司法解釈で明らかにしている。

[5] 損害賠償額の認定基準が明確化された。

 損害額の算定に関する規定が設けられ、更に適用について最高裁人民法院の司法解釈で補われている。

[6] 代理人制度の整備が進んでいる。

 特許に関する渉外代理人事務所が昨年末に36事務所認可され総数63事務所となった。弁護士制度については昨年全国統一の司法試験が行われ2万人余の弁護士が合格した。今後は弁護士も検事も裁判官もこの司法試験の合格者でなければならなくなった。

[7] 判決・司法解釈等の政府機関からの通達らがインターネット等で容易に入手できるようになった。

 最高人民法院の判事が自らホームページを立ち上げて公開している。

2. 日本企業の中国知的財産対策が遅れている。

[1] 中国の模造品は中国市場や周辺アジア諸国のみならず中近東、南アメリカ、米国、欧州へも輸出されている。

 ホンダの汎用エンジンの中国製デッドコピー製品が周辺アジア諸国のみならず中近東、南アメリカ、米国、欧州へも輸出されている。これに対して欧州各国で差止めの仮処分決定が出されている。

[2] 中国における日本からの特許出願等の件数は増加しているが市場防衛を図るのには充分な量とはいえない。

中国における日本からの出願件数(カッコ内が日本からの出願件数)

  • 2001年 意匠出願総件数 60,647件(4,187件)
  • 2001年 特許・実用新案・意匠出願総件数 203,586件
  • 2002年 特許・実用新案・意匠出願総件数 252,632件

中国における特許出願等の増大にもかかわらず日本からの出願数の増加が鈍い。

[3] 中国の模造品対策については中国側弁護士・侵害調査会社等に依存しすぎている傾向がある。

 大手企業をはじめ直接中国側の弁護士事務所・特許事務所等と出願・係争処理を行っている企業が多いが、充分に精査して利用しているようには思われない。常時、提携している日本の弁理士を活用すべきだ。

[4] 中国の知的財産制度は日本とは違う特徴があり、この特徴の違いを充分に理解して知的財産戦略を立てる必要がある。

中国の知的財産制度に関する情報は比較的入手し易い環境ができつつあり、日本や欧米と違う制度環境にあることを十分に研究して対策を立てる必要がある。

[5] もっと、中国市場を将来の大きな市場として捉え、中国知財戦略を企業全体の知財戦略の一部として考える必要がある。

 中国の知財戦略のために特別な予算等を持っている企業は少なく、紛争が生じてからの事後的な対応が目立つ。