2010年4月1日より施行 EPC規則改正について
EPC規則改正の概要 (2010年4月1日以降施行)
2010年4月1日より欧州特許条約(EPC)規則改正が施行されます。改正のポイントは、分割出願を行うことができる時期に新たな制限が加えられたことです。詳細は、以下をご参照下さい。皆様の今後の出願にお役立て下されば幸いです。
1 分割出願時期の制限
現行規則の下では、親出願が係属中であればいつでも分割出願を行うことができます。親出願自体が分割出願である場合も同じく親出願が係属中であればいつでも分割出願を行うことができます。
しかしながら、改正規則の下では、2010年4月1日以降の出願、及び2010年4月1日時点で係属中の出願に関して分割出願を行う場合、これまで通り親出願が係属中であることに加え、以下の新たな時期的要件1.1.または1.2.を満たす場合においてのみ分割出願を行うことができます。
1.1. 発明の単一性違反の拒絶を受けた場合
発明の単一性要件を満たしていないことを指摘する審査部による最初の審査通知から24ヶ月以内(延長不可)。
なお、調査部が作成するEESR見解書は「審査部による最初の審査通知」には含まれません。EESR見解書において発明の単一性違反が指摘されることがありますが、審査部も同様の判断である場合、後に審査部より発明の単一性違反の指摘を含む審査通知が発行されますので、かかる指摘を含む最初の審査通知から期限を起算します。
また、分割出願において発明の単一性違反の審査通知を受けた場合、もし親出願(=最先のEP出願)で既に同じ内容の発明の単一性違反の審査通知を受けていた場合には、当該親出願における発明の単一性違反の審査通知から期限を起算します。
1.2. 自発的な分割出願を行う場合
ファミリーの最先のEPC出願において発せられた審査部による最初の審査通知(オフィスアクション又はEPC規則71(3)に基づく通知)から24ヶ月以内(延長不可)。
2 その他の改正点
2.1. 欧州拡張サーチレポート(EESR)に対する応答の義務化
現在、欧州特許庁(EPO)を国際調査機関(ISA)または国際予備審査機関(IPEA)とするPCT出願を除く全出願について、欧州拡張サーチレポート(略称EESR)が発行されています。
これまでEESRに対する応答義務はありませんでしたが、2010年4月1日以降にEESRが発せられる出願に関しては、EESRへの応答(すなわち見解書において述べられている拒絶理由に対する応答)が義務化されます。
応答期間は、通常出願の場合はEESRの公開から6ヶ月、欧州特許庁をISAまたはIPEAとしないPCT出願の欧州広域段階出願の場合、EPOにより指定される審査続行手続の期限内(現行では2ヶ月)です。応答を行わなかった場合、出願は取り下げられたものとみなされます。
2.2. 国際調査機関(ISA)または国際予備審査機関(IPEA)としてEPOが作成した国際調査見解書または国際予備審査報告に対する応答の義務化
国際調査機関(ISA)または国際予備審査機関(IPEA)として欧州特許庁(EPO)が作成した国際調査見解書または国際予備審査報告に対する応答が義務化されます。応答期間は、 PCT出願のEPC広域段階移行手続が行われてから間もなく発行されるEPC規則161に基づく通知から1ヶ月(延長不可)です。
2.3. 自発補正の制限
自発補正を行うことができる時期が、前記2.1または2.2のEESRまたはEPC規則161に基づく通知に対する応答期限までに制限されます。その後の審査経過においては、これまで通り審査部の同意が得られる場合に限り自発補正を行うことができます。
また、自発補正を行う場合、補正箇所と明細書中のサポート部分を明示することが求められます。これを行わなかった場合、EPOより1ヶ月以内に提出を求める通知が発せられます。この通知に応答しなかった場合、出願は取り下げられたものとみなされます。
2.4. サーチに関して
2.4.1. サーチ対象となる独立クレーム数の制限
発明の単一性を満たし、かつ、ごく限られた例外条件を満たす場合に限り、出願に同一カテゴリー(生産物、方法、装置、用途)に属する複数の独立クレームを含めることができます。
これまでは、審査段階において前記要件を満たすことが求められていましたが、改正後は、サーチが行われる前の段階において前記要件を満たすことが求められます。出願に同一カテゴリーに属する複数の独立クレームが含まれる場合、サーチレポート作成前に、どの独立クレームに基づいてサーチすべきかを問う通知が発せられます。通知に対して2ヶ月以内に応答しない場合、各カテゴリーの最初のクレームについてのみサーチが行われます。通知に応答する際はクレーム補正はできません。また、後の審査経過においてサーチされなかった発明をクレームすることもできません。
なお、サーチが一部のクレームについてなされた場合、当該出願における発明の権利化は、サーチされた発明に制限されます。
2.4.2. 不完全なサーチ
発明が有意義なサーチが行えるほど明瞭でないと判断された場合、サーチすべき発明を特定するように求める通知が発せられます。通知に対して2ヶ月以内に応答しない場合、または応答によっても発明が十分に特定されないと判断された場合、一部のクレームについてサーチ可能な場合には部分サーチレポートが発行され、サーチがどのクレームについても不可能な場合は、その旨の宣言がなされます。
2.4.3. 適用時期
上記2.4.1および2.4.2の改正は、2010年4月1日以降にサーチレポートが発行される出願に適用されます。