2004年1月1日

平成15年度PCT規則改正について

 世界知的所有権機関(WIPO)は、拡張国際調査制度の導入等を柱とするPCT規則改正を2004年1月施行した。

1 PCT規則の主な改正事項

1 出願手続に関する改正事項

1 指定手続の簡素化
 改正前は出願時に権利取得を希望する国を1ヶ国ずつ指定する必要があったが、2004年1月1日以降に受け付けられた国際出願については、全てのPCT加盟国が指定されたものとみなされる(いわゆる「みなし全指定」)。
 従って、出願時に権利取得を希望する国を指定する必要はなく、国内段階移行期限までに、権利取得を希望する国を決定すれば足りる。

2 願書の記載要件の緩和
 改正前は願書において、複数の出願人のうち、全員の表示(氏名(若しくは名称)、あて名、国籍(または住所))、及び署名が必要であったが、今後の国際出願について、少なくとも1人の出願人の表示及び署名が願書にあれば足りる。

3 委任状の提出省略
 改正前は受理官庁に対して、国際出願代理人を選任する委任状を提出する必要があったが、今後の国際出願については、委任状提出を省略できる。

2 国際調査に関する改正事項

 2004年1月1日以降の国際出願について、国際調査報告書に、その発明の特許性(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)に関する見解書(国際調査見解書)が添付される(拡張された国際調査制度)。国際調査見解書は、肯定的な内容であっても否定的な内容であっても作成される。 これにより出願人は、国際予備審査を請求しなくても、国際段階において特許性の有無に関する判断材料を入手することができる。

3 国際予備審査に関する改正事項

 改正前は国際予備審査の請求期限は特になかったが、2004年1月1日以降の国際出願については、当該期限は国際調査報告+国際調査見解書の発送日から3月又は優先日から22月のいずれか遅く満了する日となる。

 また、国際調査見解書が、国際予備審査における見解書(第1回見解書)とみなされる。

2 改正への留意事項

1 出願手続について

1 指定手続の簡素化について
 「みなし全指定」が採用されたことにより、日本国の出願を基礎としてPCT出願する場合、日本国も指定されるため(いわゆる「自己指定」)、日本国の指定を取り下げないまま出願日から1年3ヶ月(15ヶ月)経過すると、基礎出願が取り下げられたものとみなされる(特許法第42条第1項)。

 従って、日本国での基礎出願の権利化を希望する場合、遅くとも基礎出願日から1年3ヶ月以内に

  • 1 出願時に自己指定を取り下げる
  • 2 日本国について優先権の主張を取り下げる

 いずれか手続を行う必要がある。また、基礎出願がみなし取り下げとなった場合、

  • 3 PCT出願を日本国の国内段階に移行

 手続が必要な場合がある。


2 願書の記載要件の緩和について
 従来どおり、全ての出願人の表示及び署名が願書にあっても特に不都合は生じない。


3 委任状の提出省略について
 自己指定の取り下げ等、指定の取り下げについては委任状が必要となる。

2 国際調査に関する留意事項

 国際調査見解書の内容が否定的である場合、次のような措置が可能である。

  • 1 意見、反論を「コメント」として書面で国際事務局に提出する。これにより、コメントが国際事務局から指定官庁に転送され、後の実体審査のための非公式なコメントとして取り扱われ得る。
  • 2 19条補正 *1 を行う。
  • 3 国際予備審査を請求すると同時に、答弁書・補正書(34条補正 *2) にて国際調査見解書に対して反駁、抗弁する。
  • 4 国際出願を取り下げる。

*1 「19条補正」とは、国際調査報告書を受け取った後にする補正で、「請求の範囲」のみを補正することができる。
*2 「34条補正」とは、国際予備審査においてする補正で、「請求の範囲」のほか、「明細書」及び「図面」について補正することができる。

3 国際予備審査請求に関する留意事項

1 国際予備審査に関する留意事項
 [1] 国際調査報告書が否定的な内容であり、且つ、国際調査報告書+国際調査見解書の発送日から3ヶ月又は優先日から22ヶ月のいずれか遅く満了する日までに国際予備審査を請求しない場合、国際段階で否定的な見解が示された状態で各国の国内段階に移行せざるをえなくなる。

 実体審査が行われる指定国においては国ごとに意見書・手続補正書提出等の個別の対応を迫られ、また、実質的に実体審査が行われない国については特許されたとしても権利行使の際に不利となるおそれがある。

  [2] また、国際予備審査を請求した場合、国際調査見解書が国際予備審査における第1回見解書とみなされる。すなわち、国際調査見解書が出た後、国際予備審査の請求と同時に第1回見解書が存在することになり、早期に反駁・答弁しない場合、国際調査見解書の見解内容がそのまま反映された形で国際予備審査報告書が作成されてしまうことになる。

2 国内移行期限に関する留意事項
 さらに、以下の国(2004年1月13日現在)については、優先日から19ヶ月以内に国際予備審査を請求しないと、国内段階移行期限が優先日から30ヶ月ではなく、20ヶ月となる。

  • 該当国
    ブラジル、スイス、フィンランド、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、タンザニア、ウガンダ、セルビア・モンテネグロ、ザンビア

 但し、スイス、フィンランド、ルクセンブルク、スウェーデンは、EPC指定国となっている場合、優先日から31ヶ月以内に国内段階に移行すれば足りる。
 また、タンザニア、ウガンダ、ザンビアは、ARIPO指定国となっている場合、同様に、優先日から31ヶ月以内に国内段階に移行すれば足りる。

3 当所の見解

1 出願手続について

1 指定手続の簡素化
 日本国際出願を基礎としてPCT出願する場合、国際出願前に、日本国の指定(自己指定)を取り下げることの要否についてお客様各位に確認させていただきます。
 この際、基礎出願の内容と、PCT出願の内容とを比較検討した上で、自己指定を取り下げる要否に関して説明致します。
 例えば、「基礎出願の内容とPCT出願の内容とが実質的に同一であり、将来的に両出願が競合するおそれがあるので、自己指定を取り下げる必要があります。」とか、「基礎出願に改良発明等を追加してPCT出願したので、PCT出願をもって権利取得をしたほうが好ましく、自己指定を取り下げないとよいと考えます。」等の説明を致します。
 そして、必要に応じて、国際出願と同時、又は国際出願番号がつき次第、自己指定の取り下げ手続をする方針です。
 なお、自己指定の取り下げが必要な場合として、基礎出願とPCT出願の内容が実質的に同一である等のため、基礎出願について権利取得を希望する場合が挙げられます。自己指定の取り下げが不要な場合として、基礎出願に改良発明等を追加してPCT出願した場合が挙げられます。

2 願書の記載要件の緩和
 個々のお客様を尊重する観点から、従来どおり、願書には、全ての出願人の表示及び署名を掲載致します。

3 委任状の提出省略
 自己指定の取り下げ等の要否に関係なく、これまでと同様、原則として出願時に委任状を提出する方針です。

2 国際調査に関する当所の見解

 国際調査見解書をお客様各位に送り、追ってこの国際調査見解書の内容(見解が肯定的であるか否定的であるか)に応じた当所コメントをお客様各位に報告致します。
 また、国際調査見解書の内容報告とともに、国際予備審査の請求等、今後の手続きについてお客様の方針・ご希望を確認させていただく方針です。
 原則として、19条補正はおすすめしません。これは、19条補正は対象が請求の範囲に制限されているからであり、また、国際段階における補正の機会として、国際予備審査を請求した後の34条補正が可能だからです。

3 国際予備審査請求に関する当所の見解

1 国際調査見解書の内容が肯定的である場合
 原則的に、国際予備審査を請求せず、各国の国内段階移行手続を進めることをお勧めさせていただきます。
 また、前記各国(ブラジル等)への国内段階への移行期限を30月とすることの必要に応じて、優先日から19月以内に国際予備審査を請求します。
 さらに、お客様のご希望に応じて、国際予備審査を請求します。

2 国際調査見解書の内容が否定的である場合
 原則として、国際予備審査請求することをお勧めさせていただきます。
 これは、国際段階で肯定的見解を得た後で各国の国内段階に移行し、各国で円滑且つ迅速に有効性のある強い権利を取得するとともに、権利行使の実行を図るためです。
 また、国際予備審査の請求と同時又は早期に答弁書・補正書(34条補正)を提出することをおすすめする方針です。これは、国際調査見解書が国際予備審査における第1回見解書とみなされ、反駁・答弁する前に国際予備審査報告書が作成されてしまうことを回避するためです。
 そこで、遅くとも国際予備審査請求期限の1月前をめどに、補正・答弁等の対応措置をお客様各位に提案する方針です。