2012年2月1日

「特許延長登録出願の審査基準」の改訂について

1.改訂の背景

 今回の審査基準の改訂は、昨年4月の、武田薬品工業の医薬品の存続期間の延長登録出願に関する最高裁判決(平成21年(行ヒ)第324から326号)で、特許庁が従来の審査基準により、「同一の有効成分と効能・効果の先行医薬品の存在」を理由として、先行医薬品には使われていない特許の延長を認めなったのは誤りとされたことを受けたものです。
 審査基準による判断が必ずしも絶対的なものではないことを示した事例としても、参考になると思います。

 上記最高栽判決は、医薬品の特許期間の延長について、同一の有効成分と効能・効果の医薬品が先に販売されているとの理由で、新たな医薬品の承認に要した期間の延長を認めなかった特許庁の審決を不服として、武田薬品工業が拒絶審決の取消しを求めていた訴訟の上告審です。この上告審で特許庁の上告が棄却され、拒絶審決の取り消しを命じた知財高裁の判決が確定して特許庁が敗訴しました。
 最高栽は「すでに製造販売の承認を受けた他社の有効成分と効能・効果が同じ医薬品があっても、同医薬品には武田薬品工業の対象特許は使われておらず、また、医薬品は、有効成分、効果・効能が同一であっても、錠剤の構造などが違えば新たな承認が必要になる。」と説明し、「有効成分と効能・効果が同じ医薬品が既に存在していれば、特許の存続期間延長は認められないとする、従来からの特許庁の判断は誤っている。」として、知財高裁と同様の判断を示し、特許庁による拒絶審決の取り消しを命じたものです。

2.改訂事項

(1)改訂前の審査基準

 特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとき(特許法第67条の3第1項第1号)として、
「(4)医薬品の承認等を受けた物と実質的に同一の物の取扱い
 既に政令で定める処分を受けた物と実質的に同一の物であって、その用途が既に処分を受けた物と同等であるときは、その物について処分を受けることはその特許発明の実施に必要であったとは認められないこととする。」とし、
 「例えば、ある化合物及びその塩がクレームされている特許権があるとき、ある化合物のナトリウム塩を有効成分とする医薬品に対して承認が既に与えられていれば、その化合物のカリウム塩を有効成分とし、かつ効能・効果が同等である医薬品に対する承認に基づく延長登録の出願は拒絶される。」との例が示されていました。

(2)改訂後の審査基準のポイント

 上記最高栽判決と齟齬(そご)しないように、特許法第67条の3第1項第1号の判断においては、「特許発明の実施」を以下のようにとらえて、「政令で定める処分を受けることが必要であった」か否かを判断するとされました。
 「『特許発明の実施』は、処分の対象となった医薬品その物の製造販売等の行為又は処分の対象となった農薬その物の製造・輸入等の行為ととらえるのではなく、処分の対象となった医薬品の承認書又は農薬の登録票等に記載された事項のうち特許発明の発明特定事項に該当するすべての事項(「発明特定事項に該当する事項」)によって特定される医薬品の製造販売等の行為又は農薬の製造・輸入等の行為ととらえる。」

※改訂の詳細は、以下の特許庁ウェブページをご参照下さい。

3.適用時期

 平成23年12月28日以降の審査から適用されています。
 なお、下記の判決後の平成23年5月16日に、延長登録出願の審査の着手は、原則として、改訂審査基準の公表まで止めるとアナウンスされており、今回の審査基準の改訂により延長登録出願の審査が再開されました。