2005年7月1日

株式会社バーチャルハーモニー
3次元コンピューターグラフィックスを利用した学習支援教材の開発

 小泉首相の知的財産創造立国宣言以来、わが国の知的財産制度は、知財改革とそれに伴う司法制度の新たな構築がなされてきた。

 現在、わが国では、知的財産を積極的に活用し、国際競争力の強化していく知財財産推進計画2003、3004が実行され、知的財産制度は制度面、手続面において大きく前進した。

 知財改革の反響は、中小企業の特許出願に対する認識も大きく変化してきている。
 中小企業にとって資金面や人材不足は大きな課題である。しかし、国際競争に勝ち抜くためには、大企業と同じ土俵の上で戦わなければならない。
 よって、中小企業は大企業ができない独特の技術開発、製品開発を行ない知的財産制度を活用することの重要性が認識されるようになってきた。

 これまで特許権の取得は、防御的な面が非常に強く、出願件数をあげることに意義があるといった傾向にあった。
 しかし近年の様々な動きのなかで、「知的財産サイクル」すなわち創造、権利化、活用という特許権を活用した企業戦略が意識されるようになり、厳選した後に特許出願をする傾向に変わりつつある。

 それでは中小企業にとって、独自の技術(特許)をいかに活用していけばよいのだろうか。
 創成国際特許事務所ではクライアントの協力のもと、特許の具体的な活用事例を特集した。

1 クライアント紹介・発明の概要

山野辺 久生 氏
山野辺 久生 氏

 福島県いわき市のソフト会社・株式会社バーチャルハーモニーは、2000年(平成12年)12月に創業。3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)を使用した学習支援教材、3次元形状計測装置の開発・販売を行なってきた。

 同社では、国立福島高等専門学校緑川猛彦助教授とともに「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」に関する教材セットを2003年に特許申請した(特開2005-99507)。

 本特許出願は従来、立体構造物の製図を行なう製図法の授業のなかで、平面に描かれた立体構造物から立体的に想像し全体像の把握することや立体的構造物を平面の図形に表現することを目的して行なわれてきた。しかし、構造が複雑なものになると長年の経験者であっても詳細に創造することは困難であった。
 そこで同社は、3DCGを利用することにより、これらの複雑な立体構造物の理解を容易にさせることを実現したものだ。

 本発明は、2003年10月福島県いわき市の第1回いわき発ものづくり創造コンテストにて特別賞を受賞。

 山野辺久生社長に商品開発の経緯や今後の展望について伺った。

2 3次元CG技術を用いた新たな挑戦

「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」の開発の舞台裏

3DCGで作成した 立体構造物の一例
3DCGで作成した
立体構造物の一例
(C)(株)バーチャル・ハーモニー

「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」の発明をされるきっかけをお聞かせ下さい。

 「3次元コンテンツの機能を学習教材として有効活用できないだろうか」
 国立福島高等専門学校緑川猛彦助教授に相談したことから始まりました。 緑川助教授(以下先生)から「こんなものはできるだろうか?」と橋脚の図面を見せていただきました。

緑川猛彦助教授は、国立福島高等専門学校 建設環境工学科にて材料学、コンクリート工学、リサイクル工学を専門に教鞭をとられている。


 同学科において緑川先生は、工学の製図も指導おりまして、その中でも橋脚の構造説明、製図方法は、生徒にとって非常に難しいものであるとのことでした。
 そこで、本発明への取り組みが始まりました。
 まず始めに緑川先生より私自身が図面の見方を指導してもらい、授業に役立つ方法を3次元の中に取り組んでいき、最終的に現在の特許を申請するまでになりました。

製品化された「鉄筋コンクリート構造物の背筋図」は、完成度の高いものになりましたね。

 特許出願例の橋脚の立体構造図を制作後、さらに緑川先生が担当されている「鉄筋コンクリート構造物」の製図を全て3次元コンテンツにしてみようということになりました。
 橋脚の他に、ポストテンション方式単純T桁橋をはじめ、計6つの構造物の背筋図を内容にした「鉄筋コンクリート構造物の背筋図」にまとめ、授業のカリキュラムに耐えられる製品を完成させました。

完成した商品に対する反響はどうでしたか。

 完成した商品を体験した生徒の第一声は「すごい!」でした。
 緑川先生は、この後、教え方が変わり、真っ先に構造の一番複雑なところ、難しいところをこの3次元で見せ、その後に製図の仕方を教えるようになったとのことです。

学習ソフト「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」は、福島高等専門学校の他、水戸工業高等学校に納品され、教育機関の反響が大きいものであったと伺いました。

 茨城県水戸市にある水戸工業高等学校では、「すばらしい。今の生徒は橋脚といってもほとんどがわからないので、これがあると、ほんとにいい。」との評価をいただき、2005年2月に納入させていただきました。
 また、福島県いわき市にある平工業高等学校、日本大学においても高い評価をいただきました。

3 開発成功と次なる挑戦

「理科副教材(全編八章)」の開発

理科副教材(全編八章) 3DCG画像の一例
理科副教材(全編八章)
3DCG画像の一例
(C)(株)バーチャル・ハーモニー

学習ソフト「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」の製品化成功が、東北大学未来技術共同研究センターとの連携により理科副教材を開発にもつながったと伺いましたが 。

 学習ソフト「理科副教材(全編八章)」は、「電流と磁界」や「酸とアルカリ」など物理、科学的現象を3次元アニメーションで分かりやすく説明するソフトです。
 中学生を中心に幼稚園から高校生まで使える理科副教材で、パソコン上で対象を自由に回転、透視できます。教科書の解説ではわかりづらい自然現象を視覚的に認識させることにより、科学的に理解する効果があります。
 「理科副教材(全編八章)」は、2003年に「WEB3Dのビジネスモデルの研究」をテーマに東北大学未来科学技術共同研究センターと共同研究により完成しました。ちょうどこの時期に、「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」を開発始め、これに少し遅れて、「理科副教材(全編八章)」を開発・制作しました。東北大学とは、他に何件か開発・制作しましたが、橋脚の成功のおかげで、「理科副教材(全編八章)」も製品化にまですることになりました。東北大学との他の案件はまだまだ開発する必要があり、今後の課題です。

学習ソフト「理科副教材(全編八章)」は、新聞6紙で紹介され、その評価は非常に高い。

「理科副教材(全編八章)」は新聞でも大きく取り上げられましたね。

 「理科副教材(全編八章)」は、福島県高等学校理科部会の展示に出展し、非常に反響があり宮城県、福島県等多数の先生方より高い評価をいただきました。
 同商品については、既に小中学校5校に納入させていただきました。
 当社ホームページや科学技術館でも体験操作ができますので、一度操作していただければと思います。

4 今後の展開

理科副教材(全編八章) 3DCG画像の一例
理科副教材(全編八章)
3DCG画像の一例
(C)(株)バーチャル・ハーモニー

今回の特許出願を活用した今後の展望をお聞かせ下さい。

 反響の大きい学習ソフト「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」については、首都圏を中心とした大学機関にも今後営業範囲を広げていく計画をしております。
 現在、「鉄筋コンクリート構造物の配筋図」の発明を応用し、新たな理科副教材や数学副教材等の開発に取り組んでおり、近日試作品が完成します。
 さらに、東北大学との共同研究の中で、開発途中の案件もありますので、それらもいずれ特許権を取得し、展開いければいいですね。
 ソフトに関する特許権取得はむずかしい面があるので、特許事務所さんの支援を受けて、なんとか特許にし、製品の基盤を整えていきたいと思います。

ご回答ありがとうございました。

文・構成 中村 晋

5 会社概要・参考文献

会社情報

株式会社バーチャル・ハーモニー
 住所
  福島県いわき市小名浜字栄町70-3
 Tel
  0426(52)0222
 Fax
  0426(54)7811
 URL
  http://www.jsdi.or.jp/~hisao713/
 事業内容
  3次元コンテンツの制作・販売
  学習支援用3次元コンテンツの販売
  学習支援用3次元コンテンツの販売

参考文献

  • 東北経済産業局ホームページ
    「BUY・ベンチャー東北」
  • 日本経済新聞
    2004年12月14日「科学現象 3次元アニメで」
  • 讀賣新聞
    2005年1月8日「科学現象をCGで」
  • 朝日新聞
    2005年1月27日「三次元で『フタバスズキリュウ』」
  • 河北新報
    2005年3月3日「とうほく交流ワイド」
  • 産経新聞
    2005年3月22日「列島経済フラッシュ」